あの日をポケットにしまって





久しぶりの休日だから家でゆっくりしよう思ったけれど、ここにいると苦しくなる。

気晴らしにと思い外に出たのに結局これだ。


目の前にある大きな水族館に、そっと足を踏み入れた。


ぼんやりイルカを見ながら、『思ったより大きい』と驚いてはしゃぐ未咲の面影を思い出す。



ずっとこうして時間が経った。


どうしようもない自分のそばにいてくれた人。

生きるということは絶望だけじゃないと教えてくれた人。



願いは叶わなくても。

もう一度だけ、……会いたい




__「未咲!」



「こっちにイルカいるよ」

「あーほんとだ」



空耳だと思った。

その声があまりにも懐かしかったから。


でも喋り方も声のトーンも仕草も


未咲だ。


少し大人になっているけど、未咲だ。


息ができないくらい、周りが見えなくなるくらい。

会いたかった。



「写真撮ってあげるよ」

「いやいいよあたしは」



写真が苦手なところも変わってない。


あれだけ会いたかったのに、一歩も足が動かない。