あの日をポケットにしまって




「…思い出コーナー」



奥に進んだところにあるその場所を見て、ふと思い出す。

高校生の頃にもあった。

たしかあの時は、いらないといって、見向きもしなかったんだっけ。


そういうのに興味を持たない夏奈が「見てかない?」と小首を傾げて言った。


ぶらりと見て歩く。


カップルで撮った写真。

誰かがずっと大切に使っていたであろう、サメのマスコットがふたつ。


ものを見ただけで、なぜかその人の想いが伝わってくる。


のんびり歩いていると、ふと見つけたボロボロのミサンガ。

汚れているけれど、色は赤と白に見える。


胸がトクトクと速く鳴ってく。


ミサンガの近くにメッセージカードがある。



「幸せな…思い出を…あり…がとう」



不器用な字の形は、君に似ていて、君で、



「……リクト」



下の方に小さく書かれたその名前は、あたしが大好きな人の名前で…



「璃久徒…っ…」