あの日をポケットにしまって




次の朝。

眠たい目をこすりながら夏奈のメッセージを読んで、飛び起きた。


〈 ペンギンかわいい 〉



それと一緒に送られてきた一枚の写真には、夏奈が水槽の前で嬉しそうにペンギンの真似をしている姿がうつっている。



「えっ、ちょっ…は?!」



なにがなんだか分からず、とにかく適当な服を着て家を飛び出した。


久しぶりの連絡がこれだなんて、ほんとうに夏奈はマイペースで、呑気で……優しい。

なにも変わらない。


「はぁっはぁっ」



なんとかたどりついた思い出の場所を、懐かしむ暇もなく駆け抜ける。

電話をかけようとしたとき、トンネルのなかでクラゲを見あげる夏奈の後ろ姿を見つけた。



「夏奈っ」

「あっ未咲!久しぶりーっ」



より大人っぽくなった夏奈が、ふにゃりとうれしそうに笑う。

怒ろうと思ったのに、その笑顔を見るともうなにも言えなくなる。



久しぶりに会うというのに、まるで昨日も一緒にいたみたいに、なにも違和感がなくて、



「未咲!」



名前を呼ばれるのが嬉しい。