あの日をポケットにしまって



「つけるときにお願いごとしたら、切れたときに叶うんだって」

「ふーん」

「どこがい?」



君が手じゃなくて足をだしたとき、他の女の子に見られないためだと思った。

きっとそうじゃない。

言い聞かせても、もうだめで、

面倒くさいと嫌われたくなくて言えなくて、



「…なんてお願いした?」

「未咲と――」

「あっまって、」

「うぶっ」

「…やっぱ言わないで、言うと願いごと叶わなくなるって言うじゃん」



いつかバイバイを告げられるのが、怖くてしかたなかった。



「未咲が聞いてきたんだろ」

「…あたしもつけよ」



あたしの手から、君がそっとミサンガうばう。



「つけてくれんの?」

「どこ?」

「右手がいい」



「いつでも見えるとこ」



君は黙ってミサンガをつけて、あたしを見つめる。



「……なんてお願いした」

「あたしが璃久徒を笑顔にする」



その顔を見ていたら、



「……あ」



思わず口を滑らせてしまった。