22時からはじまる恋物語


翌週、塾の扉を開いたら、早速あの美しい男子高校生(講師)が目に飛び込んできた。

「あ、おはようございます」
「お、はようざいます」

いやいや、どんな間抜けな挨拶よ。
見慣れない顔面に戸惑いながら、精神統一の為にふうっと息を吐き、指導ファイルに手を伸ばす。

教室は1番早いBコマの終盤。
今日はC、Dと連コマで授業だ。

今日の担当生徒の授業進度を確認しながら、チラッと横目で楠木君を確認する。

手慣れた手つきでファイルをめくり、真剣な眼差しを落としている。
少し目にかかる前髪が、かえって彼の切長の目元を強調させる。

横顔、彫刻か何かですか。

「...あの」
「は、はひ!?」

彫刻の口元が動き、思わず声が裏返る。
い、いかんいかん。
彼はまだ新人講師。わたしは年上の先輩講師。
気を引き締めねば。

「あ、何かわからないところある?生徒のこととか、ファイルの見方とか、わからないことあれば何なりと聞いてね!」
「あ、授業に関しては大丈夫です。担当する子も知ってる子ばかりだし」
「そ、そっか!」

何とも頼もしい新人講師だ。
新しい講師が入ると大抵授業もフォローが必要だけど、今日は不要かもしれないな。

そんな先輩ヅラをしてるわたしの方に、彼の顔が向いた。

目が合い、一気に先輩面が溶ける。

「えっと...桜井先生」
「あ、はい、桜井です」

胸に下げたネームプレートに視線を落とす彼に、改めて自己紹介をする。

「彼氏、います?」
「は?」