22時からはじまる恋物語


丹羽とシフトが被るのは久しぶりで、最近の吉井さんの態度に若干疲れも出ていたわたしにとっては心強い助っ人だった。

案の定吉井さんは、わたしの言うことを殆どスルーし、たまに返したと思えば「うざ」か、ため息。
相手は年下の女子高生だと分かってはいるものの、続くとなかなか精神的にもこたえる。

「ってか、今日丹羽先生いるなら数学にしたらよかった。ねぇ、変わってよ」
「いや、丹羽先生も今日フルで見てるからそれは......」
「は?こっちはお金出してんだから、ちゃんと授業受けさせてもらう権利あると思うんですけどー」

な、なんて理不尽な。
授業放棄してるのはあなたでしょうが。

生徒相手にイライラしても仕方ないと思うけれど、さすがにイライラが爆発しそうになった時、「吉井」と声が降って来た。

横に立っていたのは、正に今話していた丹羽。

「授業中だ。私語は慎む様に」
「せんせー、この前の宿題でわかんないとこあったんだけど、今日教えてよ」
「......とりあえず、次見てやるから静かにやれ」

はぁっとため息をつき、わたしに向かって目配せをする。
思いっきり注意することもできただろうけど、火に油の可能性も高い。
どのみち古文の授業なんて成り立たないのだから、丹羽に数学を見てもらえたらわたしも他の生徒に集中できてありがたい。

丹羽の負担が増えることを申し訳なく思いつつ、わたしも肩で息をついた。