高校生の生徒数が増えた為、わたしも担当する高校生が必然的に増えた。
特に女子生徒が増えたのは、これまた必然なんだろう。
「なーんで楠木君が担当じゃないのぉ?」
スマホをいじりながら、はぁっとため息をつく女子生徒。
高3古文ということで、気合入れて予習したんだけどな。そもそもの彼女は、全くもって勉強する気がない。
「......吉井さん、授業中はスマホしまおうね」
「だっる。いいって小言は。それより先生、あたし楠木君の隣がいいんだけど」
「......楠木先生も授業中だから」
「えー、楠木「先生」だって!なんかやらしー」
「やらしーってどういう意味?」
ケラケラ笑う吉井さんの隣には、受験生の大西さん。わたしは慌てて、「大西さん、問題できた?丸付けしよう」と席を離れた。
増えた生徒の大半の目的は、勉強じゃなくて楠木君。
勿論多くの生徒は勉強をする「ふり」をしながら、こっそり楠木君を眺めているわけだけど。
(そしてそんな生徒達をどうにかやる気にさせるのが講師陣の仕事なわけで)
ただ一定数、この「ふり」すらしない生徒もいるのが現実。
そう、吉井さんは、その筆頭生徒だ。


