いつも斜め後ろで授業をしている楠木君。
たまに聞こえる落ち着いた声が、慌ただしい時間の中でも少しだけ心地よく感じたりしていて。
そんな風に彼の授業を意識してしまうのはなんだか気恥ずかしく、雑念雑念!と追い払っていたのだけど。
『後ろから見させてもらって』
......楠木君が、見てくれてたなんて。
「......なーんか先生、今日優しくない?」
「へ?」
次の日の授業中、担当生徒が核心をついてきた。
「そ、そう?」
「うん、なんか声のトーンがひとつ高い」
「なーに言ってんの、桜井先生はいつだって優しいでしょ?」
「えーなんかこわーい」
「ほら、雑談やめて小テスト!」と、平静を保ってるふりをするけど、意識は心なしか、斜め後ろに行っていて。
我ながら単純だ。
見られているとわかって、意識しちゃうなんて。
授業に支障が出ない様に、しゃんと背筋を伸ばし、生徒達の訝しげな視線を感じつつも、「よし、張り切って勉強するよー!」と気合を入れた。


