「あれ?今日はため息ついてないから、居ないのかと思った」

その声に、僕は口角が自然に上がるのを感じた。

上半身を起こし、

「おはよう」

そう言うと、エイラも微笑んで返してくれる。

「なんか、今日はちょっとスッキリした顔してるんじゃない?」

そう言われ、根本的な問題は何一つ解決してはいないものの、この保健室で束の間の安らぎを得ている自分に気付く。

「エイラこそ、体調どうなんだよ?」

「小康状態かな。いつどうなるかわからないのが怖いところだけど」

そう言われると、僕まで怖くなってしまう。

「あ…ごめんね、心配させるようなこと言って。私は大丈夫!」

微笑んで言うけれど…。

さっきの、いつどうなるかわからないのかわからないのが怖い、というのが彼女の本音なのはよく判る。

僕の前では、いつも健気に明るく振る舞っているが、もしかすると、夜になれば、孤独と不安で、人知れず涙を流しているのかもしれない。