それでもそんな君が好き

「あ、結衣(ゆい)。おはよ」

「おはよー結衣!」

「ゆいぴー、今日来るの遅かったね?」


教室に着くと、仲のいい友達が挨拶してくれる。


「おはようみんな。今日はちょっと寝坊しちゃって」


まだ何も言われないことにほっとしながらも、緊張したまま笑顔を作った。
学校に行く前はあんなに暗い顔だったのに、今は完璧な笑顔で話せている。
どこでそんなスイッチが入るのか、自分でもわからない。
それが誇りでもあり、恐怖でもあった。


「結衣がねぼー!?」

「ええ~、あんまり無理しないでよ~?」

「ちょっと夜更かししちゃっただけだから大丈夫だよ。ありがとう」


話が上手く進むように、何があったのか話さないですむように、すらすらと嘘を吐く。
ほとんど無意識だ。

だけどもし昨日のことがバレているなら、そろそろツッコまれるだろう。
緊張して体が固くなる。

このグループでいちばん物事をはっきり言う七瀬(ななせ)ちゃんと目が合うと、心臓が嫌な音をたてた。