それでもそんな君が好き

そんなしいちゃんから少し勇気をもらって桐谷くんの方を見る。


「桐谷くん、今日は本当にありがとう。桐谷くんが助けてくれなかったら、きっとあのときと同じことになってたと思う」


ふわりと嫌な記憶が思い浮かぶ。
いつだってそのことを思い出せば、胸が苦しくなって自分が嫌になって、もうどうすることもできないのに逃げ出したくなる。

だけど今は少し違う。
今日の出来事によって、いいように上書きされたのかもしれない。


「ドレスが破れちゃったときパニックになって動けなくなったけど、桐谷くんが大丈夫って言ってくれたから、頑張れたんだ」


あのときの言葉と笑顔は、私にとって魔法だった。
人魚姫だけじゃなく、私にも王子様に見えた。


「だから……ありがとう、桐谷くん」


にこりと笑ってお礼を言うと、彼も笑った。


「どーいたしまして」


その笑顔がやっぱりかっこいいなと思っていると、桐谷くんは言葉を続ける。


「つーかさ、結局は俺のおかげじゃなくて、早坂が頑張った結果だから」

「え?」

「俺はたしかに助けはしたけど、そのあと自分の力で動いたのは早坂だ。だから俺は……あのとき早坂が頑張ってる姿見て、かっこいいなって思ったよ」


予想もしていなかったことを言われてびっくりする。

私がかっこよかった?
私からしたら、桐谷くんの方が何倍もかっこよく見える。

だけど……
その言葉は素直に嬉しかった。


「ふふ、ありがとう。私も自分のことちょっとだけかっこいいなって思えたよ」


今日の出来事のおかげで、私はまた少し自分のことを好きになれた気がする。
それが嬉しくて、なんだか照れくさくもあった。