それでもそんな君が好き

最初は桐谷くんに怒られたくないという恐怖心だった。

だけれど最近は、そう言うことで怒らせたくない、悲しませたくないという気持ちの方が大きいかもしれない。

そう思えるようになったのは、きっと彼の優しさのおかげだ。


「……じゃ、これからも俺のこと忘れんなよ」
「……うん」


なんだか言葉だけ聞くとロマンチックなことを言われてドキッとする。
そして桐谷くんに振られたと言っていた瑠々ちゃんを思い出す。

一週間前に告白という大イベントがあったというのに、私が気づかないくらいに彼はいつもと変わらない様子だった。

告白されるのにも、こんな女の子が勘違いしてしまいそうなことを言うのにも慣れているんだろうな。

……ダメだ、瑠々ちゃんに仇を討ってこいと応援されているのに。


表に出ないよう必死に取り繕っていると「つーかさ」と声をかけられた。


「帰ってくんの遅い。長くなるだろうなとは思ってたけど、母さん心配すんじゃねえの」

「あはは……話してたら盛り上がっちゃって。お母さんには連絡したから大丈夫。たぶん先に寝てると思う」

「……ふーん」


まただ。
桐谷くんの方から聞いてきたのに返事がそっけない。

だけれど最近、こういうとき彼は存外いろいろなことを考えているんだと気づいた。
これを言うべきか、言わないべきか、とか。

私は悩んでいる間も当たり障りのないことを話して無言にならないよう必死になるけど、桐谷くんは違う。

少し考えれば当たり前かもしれないけれど、彼のそういった部分に気づけるようになったのが嬉しい。