それでもそんな君が好き

視線を前に戻すと桐谷くんが映る。


……うん、もう大丈夫。


ネガティブな気持ちも、不安も、緊張も、全部吹き飛ばせるように、桐谷くんに微笑んだ。


「一緒に踊ってくれませんか」


もうなにも怖くなかった。
さっきまでのことが嘘みたいだ。

王子様に手を差し出すと、優しくぎゅっと握られる。


「ああ、もちろん」


本来のセリフとは逆だったけれど、無事場面を進めることができた。

ダンスの曲が流れ始め、台本通りの流れに戻る。
クラスメイトたちが舞台に出てきたとき、心底ほっとした。


「やるじゃん」


ダンスの途中、桐谷くんに声をかけられる。
からかっているのか、本心で褒めているのか、安心しているのか、よくわからない表情だった。


「ありがとう」


だけどそれで構わない。
きっとどれも不正解で、正解だ。

こうして人生で2度目の人魚姫の劇を無事に終えることができた。