それでもそんな君が好き

「大丈夫」


小さいけれどはっきりと声が聞こえた。
はっとして目の前を見ると、桐谷くんがいつものように笑う。

ここが舞台の上だということを一瞬忘れてしまいそうな表情だった。

少し成長できたと報告したとき、一緒に遊園地に行ったとき、ガレージでダンスの練習をしたとき。

ほかにももっといっぱい、挙げきれないくらいの時間。
彼はこうやって笑いかけてくれていた。

そして、子どものときも。


そんなことを考えていると次第に、呼吸も心臓も震えも落ち着いてくる。


『なんかあったら助けるから。今度こそ』


彼は約束を守ってくれた。


『なにがあっても立ち上がるね、今度こそ』


それなら私も守らなければ。


ざわざわとした観客にも声が届くよう大きく息を吸ったとき、突然音楽が流れ始めた。
台本にはない動きに驚き、桐谷くんと目を合わせる。

すると急な音楽に驚いたのは私たちだけではないようで、観客席がぴたっと静かになった。

その瞬間を見計らったかのように、感動的な音楽は少しづつボリュームが下がる。

これならセリフが届きそうだ。
そう気づいたとき、はっとした。

ちらりと舞台袖を見ると、七瀬ちゃんたちと目が合う。
にこっと微笑まれて胸が温かくなった。