それでもそんな君が好き

ビリッ!


「え!?」


破れた。
ドレスの裾が。

舞台袖では気を付けていたのに、舞台に出て気を抜いてしまったからだ。

急いで足を上げるとレースがへにゃりと床につく。
少し、ではなく思ったよりも深く破れてしまったようで、このまま演技を続ければまた踏んでしまいそうだ。


心臓がドクンと大きく鳴ると、それから痛いくらいに焦り始めた。


「大丈夫かな?」
「なに? なんかトラブった?」


観客が一気にざわざわとし始める。
ドレスが破れた音は思いのほか大きく、もしかしたら聞こえた人もいるかもしれない。

だけど一番の原因は、驚いたときに私が声を上げてしまったからだろう。


……どうしよう。
どうしよう、どうしたらいい?


次のセリフ言わなきゃ。
覚えてる?
大丈夫、ちゃんと覚えてる。

だけどこんなざわざわした中じゃ、私の声はきっと届かない。

それよりドレスをどうにかしなきゃ。
このまま歩いたら絶対に転んでしまう。
じゃあスカートを持ち上げて歩けば……

でもこのあとダンスもあるのに、それじゃあ踊ることはできない。


それなら、ああでも、それじゃあ……
呼吸を忘れてしまうくらいパニックに陥った頭では、思考があっちこっちにいって上手く考えられない。


苦しい。
どうしよう。
怖い。
どうしたらいい。

このままずっと動かなかったら、また同じ失敗をしてしまう。

嫌なのに。
あんなに練習したのに。


……ああもう、私なんて――