それでもそんな君が好き

「よし、おっけー! うん、かわいい!」


少し話している間に衣装の着替えが終わった。

鏡に映る自分は早坂結衣だけれど、早坂結衣じゃない。
今までも何度もそう思って苦しんでいたけれど、今は違う。

表の自分も、みんなに隠している裏の自分も、こんな格好をした自分も、なぜだか簡単に受け止められる。

ずっと受け入れることなんてできなかったのに、本番で気分が高揚しているのだろうか。


終わってしまえばまたもとに戻るかもしれない。
でもそれでいい。
一度でもそう思えたことがきっと大事だと思うから。


「ありがとう! いってきます!」


どこかふわふわした気持ちのまま衣装係の子にお礼を言って、舞台へと歩いていく。
その真ん中には王子様が立っていた。

暗転しているから光ってなんかないのに、私には彼がまぶしく見える。
人魚姫にも王子様は似たように見えているんだろうなと思う。


人魚姫は行動力と勇気がある人だ。
好きな人ができて、その好きな人のためなら見知らぬ世界にまで会いに行く。

臆病者の私にはできない。
だけど彼女を演じている間は、なんだか私まで勇気をもらえている気がするのだ。