それでもそんな君が好き

ほっと安心すると同時に寂しくも感じた。
だけどそんな思いに浸る時間もなく目の前の照明が落とされる。


舞台袖にはけようとしたとき、暗い視界の中で瑠々ちゃんと目が合う。

彼女はにこっと笑うと、ぱちんとかわいくウインクをした。
その表情は魔女ではなく、いつもの瑠々ちゃんだった。

にこりと微笑み返し、今度こそ舞台袖へと移動する。

瑠々ちゃんがなにを伝えたかったのか言葉はわからないけれど、気持ちは伝わってきた。

心がほっと温まる。
次の場面も頑張ろうと心の中で意気込んでいると、衣装係の子に声をかけられた。


「結衣ちゃんっ、着替え手伝うね!」
「わ、ありがとう!」


次の場面からは、人魚姫の衣装ではなく、青いワンピースを着て舞台に立つ。
着替える時間はたった数分しかない。

衣装係の子に手伝ってもらいながら急いで着替えていると、客席からどっと笑い声が聞こえてきた。


「あははっ、ウケてよかったね」
「うん、ちょっと心配だったから安心した」


今の場面は、人魚姫の友だちである魚と、お目付け役のカニが出てくるシーンだ。
2匹の役はクラスのムードメーカーである男子たちが演じてくれている。

ここは絶対客席を笑かしたいと、あっちゃんがネタを一生懸命考えていた。

あっちゃんのネタも、演じてくれている男子たちもおもしろいから大丈夫だとは思っていたけれど、客席が盛り上がっているようで安心する。