それでもそんな君が好き

……ああ、もう始まってしまう。
ちらりと桐谷くんを見ると、ぱちりと目が合った。


「なんかあったら助けるから。今度こそ」


その言葉になんて返せばいいのかわからず、彼をじっと見つめてしまう。


『――お待たせいたしました。ただいまより、2年3組による劇、人魚姫を開演いたします』


舞台袖にも司会の声が大きくはっきり聞こえてくる。
もう行かなくちゃいけないのに、桐谷くんは私の返事を待ってくれているのか動かない。

ふとその姿が幼稚園のときの彼と重なる。


――桐谷くんの優しさはあのときからなにも変わってない。


私は今度こそいつものように笑って彼を見た。


「なにがあっても立ち上がるね、今度こそ」


その瞬間、開演のブザーが鳴る。
桐谷くんはなにも言わずただ笑って、そのまま光に照らされた舞台へと歩いて行った。

私も大きく深呼吸して前を向き、勇気を出して一歩を踏み出した。