それでもそんな君が好き

「あー! つかれたあー!」


練習終わり、ひまわりちゃんの声が響く。
今日も完全下校時刻まで残っていたので、外の景色は真っ暗だ。

帰る用意をしていると次は「やったー!」というひまわりちゃんの声が響いた。


「なに? ひまわりうるさいよ」

「ごめんごめん! お母さんが文化祭来てくれるって連絡あってさ、嬉しくて!」

「え~、ひまちゃんのママ来てくれるの? いいなあ~」

「瑠々も呼んだら?」

「う~ん、ちょっと連絡してみようかなあ」


そう言って瑠々ちゃんはスマホをたぷたぷと触る。

……そっか、みんなお母さん呼ぶんだ。
私も、と考えて首を振る。
ただでさえ忙しそうなのに呼べないな。

はあ……とため息をつきそうになったとき「結衣はー?」と声をかけられて止める。


「私は……呼んで、ない」
「そっかー! お母さんに劇見られるの恥ずかしいよねー」
「ゆいぴーはただでさえ王子様との絡み多いしねえ」


ひまわりちゃんと瑠々ちゃんの話に「あはは……」とこぼす。

たしかに劇を見られるのは恥ずかしい。
演じている自分を見られるのも、王子様役が桐谷くんだというのを知られるのも恥ずかしい。

だけどそれは正直、心の内を占めている感情に比べたらちっぽけなもので。

それを話すか話さないか悩んでいると、七瀬ちゃんと目が合った。