それでもそんな君が好き

ああでもないこうでもない、どうしようと悩んでいると先に口を開いたのは彼だった。


「一緒に踊らないか?」


突然の言葉に驚く。
だけどそのセリフには聞き覚えがあった。
なんだったっけと少し考えて、すぐに答えを思い出した。


「ええもちろん」


そう返すと彼は少し目を開いたあと、にこりと笑った。
そしてまるで王子様のように私に手を差し出す。
ドキドキしていることがバレないよう願いながら手を重ねた。


「セリフ、ちゃんと覚えてたな」
「うん。一緒にたくさん練習してるから」


突然でもセリフが出てきて安心する。
なにしろ幼稚園のときのような失敗はもうしたくない。

するとぐいっと手を引っ張られ、つられて立ち上がる。


「えっ、セリフだけじゃなくてダンスもするの?」


手を握られたまま向かい合う。
気分はもうすっかり晴れたのか、桐谷くんは楽しそうに笑った。


「せっかくだから練習しようぜ」
「えっ、でもここ狭いし、それに――」


ふたりきりで練習なんて。
そう言おうとしてすぐに止める。

口を出る寸前に止めたせいで、目の前の彼は「それに?」とすぐに聞き返してきた。


「ええっと」


正直に言うのは恥ずかしいし、好きだというのがバレてしまいそうだから言えない。
だけどなにかは言わなくちゃと必死に頭を働かせて理由を探す。