それでもそんな君が好き

「ふーん……ふたりって幼なじみなんだ……これはまたおもしろいネタだね」

「おい。おもしろがって広めんじゃねーぞ」

「ええ? じゃあなんでわざわざオレに教えたのさ。オレがそーゆー話好きなの知ってんだろ? それともそのリスクをとってでも牽制したかった?」


相田くんに対してずっと言い返していた桐谷くんが黙る。
桐谷くんが困っているのなら助けたいけれど、いったい何がどうなっているのか全くわからなくて口を出すこともできない。

するとずっと桐谷くんの方を見ていた相田くんが私の方へ首を動かした。


「あーでも、広めてほしくないのは結衣ちゃんの方かな? 桐谷くん人気者だしねえ、女の子の目が怖いよね」

「え、ええっと……それはそう、なんだけど……」


どうして彼は全部見透かしてしまうんだろう。
すごいとは思うけれど、怖いという感情の方が何倍も勝っている。

この状況で一言でも話したらまた自分の秘密を暴かれてしまうのではないかと思ってしまい、なんだかもう上手くしゃべることもできない。

……この空気、しんどいな。

そう思ったとき、相田くんはにぱっと笑った。


「あー、ごめんごめん。怖がらせるつもりはなかったんだ。オレさ、人間に興味ありすぎてついつい深追いしちゃうんだよな」


かばんを背負いなおすと、そのままガレージの出入り口の方へ歩いていく。
そして振り向いた彼の表情はいつもの親しみを感じる笑顔だった。


「今日は結衣ちゃんと、桐谷くんと、ふたりともの腹の底を知れた気がするからさ、しばらくはその秘密黙っててあげる」

「……んでそんな上から目線なんだよ」

「えー? 人のこと言う前に、カッとなったらなんでもかんでも話しちゃうその性格、なおしたほうがいいと思うよ」

「あ、相田くんっ……!」


それは桐谷くんも気にしていることなのに……!
どうしてわざわざ人の地雷を踏んでいくんだろう。
やっぱり彼とは一生相容れないかもしれない。


「それじゃあ結衣ちゃん、桐谷くん、また学校でね。おやすみ~」


相田くんはにこにこ笑顔のまま手を振ると、そのまま駅へと歩いて行った。