それでもそんな君が好き

「ど、どうしてすぐに声かけてくれなかったの……?」
「結衣ちゃんの腹の底が見てみたかったから」


にこりと微笑まれて身震いする。
そんな私にはお構いなく、相田くんは私の隣に腰を下ろした。


「ほら、結衣ちゃんってなーんか得体の知れないとこあるなって思ってたからさ。気になって盗み聞きしちゃった」


ごめんね、と言いながら、彼からは悪びれた様子が全く見られない。
私からしたら相田くんの方が腹の底が見えなくて怖かった。


「それにしても猫に話しかけるなんてかわいいね。もしかしてそれでストレス発散してる? やっぱキャラ作ってんだ?」

「え、ええと……」


答えにくい質問をぽんぽんされて言葉に詰まる。
普通は仲のいい人でもしにくいのではないかという疑問も、彼は遠慮なしだ。

やっと動揺が治まってきて怒りがふつふつと湧いてきた。
相田くんと視線を合わせると、彼は少し目を見開いたあとに「ははっ」とおかしそうに笑った。


「悪気はないんだ、ただ結衣ちゃんのこと知りたくて。怒らないでよ」

「……私だって腹が立つことくらいあるよ」

「うん。結衣ちゃんは女神でも天使でもなくて人間だもんね」

「え……」


まさかそんなふうに言ってもらえるとは思わなくて驚く。

……そうだ、そうなんだ。

いちばん理解してほしいことを彼はわかっているのだと気づいて一気に怒りが収まっていく。
そしてだからこそ相田くんのことが余計怖くなった。