それでもそんな君が好き




約束の放課後。
みんなに声をかけようとしたとき、あっちゃんがクラスに呼びかける。


「役ある人さ、できれば放課後残ってくれない? 一回読み合わせして、言いにくいところとかセリフ直したいんだよね」

「あ、そっか……」

「それ授業時間中じゃダメなの?」

「そりゃもちろんいいんだけどさ、練習できるならたくさんしときたいんだよね。やっぱりいい舞台にするには授業時間だけじゃ足りないし!」


たしかに、七瀬ちゃんの言うこともあっちゃんの言うこともわかる。
だけど今日はみんなに話をしたいと決めた大切な日だ。

でも練習することで、本番に失敗するリスクが少なくなるなら――


「んー……練習って大事だもんねえ」
「えっ! 瑠々がそういうこと言うの珍しくない!?」
「も~、からかわないでよお、ひまちゃん」


瑠々ちゃんは私に気を遣ってくれているみたいだ。
とても嬉しいけれど申し訳ない。

こういうときはやっぱり、みんなを誘った私自身がどうするか決めた方がいいだろう。
でもこういった場面で決断力や勇気に欠けてしまう。


「結衣、今日の話って今すぐ聞いたほうがいいやつ?」

「あ、ううん。そんな緊急を要する内容ではないの」

「そう。そしたら文化祭が終わったらにしない? その方が結衣もゆっくり話せるんじゃない」


七瀬ちゃんはやっぱりかっこいい。
みんなに気を配ったうえで、すぱっと決められる決断力もあるし、それを迷いなく相手に伝える勇気もある。

だけど彼女はきっと、それができるのが普通なのだ。


「……うん。じゃあそうさせてもらおうかな」

「それじゃ残ってくれるってこと!?」

「うん、よろしくお願いします」

「こちらこそー! じゃあじゃあ早速、1回読んでもらっていい?」


そうして始まった練習は、初日から完全下校時刻まで続いた。