初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました

「新しいお茶を取りに行ったのだろう
 バイロンは戻ってくるから、安心して」

エドガー様を見送る私に、殿下は笑って仰られました。
余程、不安が表情に出ていたのだと思います。


テーブルには一口でつまむことが出来るようにと用意されたプティフールやクッキー、切り分けられたフルーツ等が彩りよく所狭しと、並べられて
いました。

私の大好きなお菓子ばかりなので、侯爵家の方に既に好みを把握されているのでしょう。
ですが、さすがに今日は私も食べたいとは思えません。


「そうだな……
まずはアーロンが起こした婚約破棄について聞こうかな
 公的調書は入手してるし、王宮関係者の証言の裏は取っている
 俺が聞きたいのは、実際にその場に居合わせた君達の意見なんだ」

ようやく、私も落ち着いて返事が出来るようになってきました。


「かしこまりました
 先にお断りさせていただきますと、私はその場に、立ち合ってはおりません
私のことをお調べになられたのならご存知だと」


「君とノーマンのことだね」

当然のように、殿下はノーマン様のお名前を出されました。


「だけど、その場に残っていた者から話は聞いただろ?
 それを教えてくれたらいいんだ」