抱いて欲しい的な事を言われても、信じられなかった。
湖畔に比べて、格段に王都は暑い。
暑さに当てられたのかとしか思えない。

この頭に靄がかかったような状態で馬車に乗るのはまずいと思ったが、
クリスティン様が愛だのなんだの言い出して、
聞いていられなくなってきて、
話を合わせて彼女を宥めてから、場所を変えようと思った。



別荘に戻ってからも、クリスティン様との毎日は続く。

クリスティン様は、体調を崩して食事をしては
戻したり、寝込むことが増えたので、
俺は仕事を休まなくてはならなくなった。

別荘で俺達の世話をする公爵家の使用人達の手前苦しむ彼女を置いて王都へ行くことが出来なかったのだ。


それで俺は親父からの伝言を受け取れなかった。


 ◇◇◇


クリスティン様からの誘惑を何とかやり過ごして王都に戻った俺を待っていたのは、
シャルからの婚約解消だった。

理由はおれの不貞だった。
親父に罵られ、ディランに殴られ、母に泣かれた。

俺の不貞が理由なのに解消扱いなのはシャルの
お陰だと、アクセルに説明を受けた。
莫大な違約金でブライトン伯爵家を追い詰めたくないと、彼女が父親に頼んでくれたそうだ。