王都の公爵家御用達ブティックで婦人服と紳士服を購入した。
クリスティン様が俺に勧めてくれた上着は落ち着いた色味で俺の年齢では似合ってない気がしたがプレゼントされるのだからと、黙って受け取った。


それからふたりでカフェへ行った。
人気がありすぎて予約不可のカフェだとシャル
から聞いたことがあった。


長時間並ぶのは嫌だと、俺が言うと。
そうですわねと、シャルが笑っていた。
シャルが相槌を打つ時は、いつもそう言う。
彼女のその言葉を、ずいぶん聞いていなかった。

涼しくなったら、一緒に並んでやってもいいかなと思った。
シャルは甘いものが好きだ。
彼女の言ったこととか笑顔とか、やたら思い出すようになってきていた。


カフェの前にはやはり行列が出来ていたが、
クリスティン様はその前を当然のように通り過ぎ受付で公爵家の名前を告げた。
すると、奥から店長らしき男が出てきてペコペコしながら俺達を案内した。

並んでる皆が俺達を見て、その視線が痛かった。


公爵家の名前を出して受けるこうした扱いは
初めてじゃなかった。
これまでにも何度もあった。
その時は優越感を感じていたのに。