シャルに操を立てている訳ではなかったが、彼女以外の女性と関係を持つつもりもなかった。
俺はややこしい関係なんか欲しくない。
それだけだったのだ。


ある日、急に息抜きしたくて朝食後に、王都に
戻るとクリスティン様に告げた。


「今日も明日もお仕事じゃないでしょ
 どうして戻るの?」

「朝晩冷えてきたので、実家に上着を取りに
戻ろうかと、思ってます
 美味しいお菓子をお土産に買って帰りますので
お楽しみにしててください」


ちょっと実家に寄って、それから久しぶりに
シャルのところに顔を出そうかと、思っていた。


俺はシャルにウエディングブーケを贈る約束を
していた。
持ちたい花をまだ聞いていなかった。
人気のあるフローリストに頼むのなら、今から
予約しても遅いかもしれない。

彼女の、いつものノートにはそんな情報が書いてあるはずだ。
ふたりで眺めながら相談するのもいいなと、考えていると。


「なら、わざわざ取りに行かなくても買えばいいわよね?
 私も気晴らしにご一緒するわ」


クリスティン様は俺を逃がしてくれない。
『飼われる』という言葉が急に頭に浮かんだ。

シャルの父親から感じる圧とは、比べ物にならない得体の知れない何かが。

クリスティン様の微笑みにあった。