自分でも彼女に意地悪なことを言ってるのは
わかっていた。

言い訳じみてるが、その時はクリスティン様と どうこうなるなんて、有り得ないと思ってた。

馬鹿みたいだと嗤われるだろうけど。
女神から誘ってくれたんだ、ちょっとぐらい
夢を見させてくれよ、って。
独身最後の夏なんだから、って。


夏が終われば戻ると、言ったのは本気だった。


俺なんか選ばなきゃ、こんなこと言われなくてもよかったのに。
ディランを選んでいたら君はきっと大切にされていたよ。

彼女の涙を拭きながら、そう思った。


 ◇◇◇


夏が終わるのが待ち遠しかった。
俺はクリスティン様から解放される日を待って
いた。


仕事がある王都と別荘間の移動は覚悟してたよりキツかった。
身体だって疲れてたが、この頃は精神的に辛くなってきていた。


どんなに焦がれて求めていた相手だとしても、
ふたりきりの夏は長過ぎる。

特に最近はクリスティン様との距離が近くなってきて、彼女の手が俺の身体に触れるのも珍しくなかった。
貴女との間にそんな関係は要らないんだと、言えなかった。

女性から求められるのも悪くないが、相手は筆頭公爵家の令嬢だ。
下手に手を出したら後が怖い。