ギリアンは確信したように言いました。


「いつまで続けるつもりだと、心配していたけどね」

「それからお父様とお月様にお願いするの」

お父様には、婚約解消を。
お月様には、私が自分に掛けた呪いを解いていただくよう。


「お月様にお願いって……
 シャルってやっぱりお花畑のひとね」


 ◇◇◇


邸に戻り、まず私がしたことは従姉弟のふたりに宣言した通りに、緑色のカバーのノートを暖炉に捨て、火を着けることでした。

めらめらと上がった炎がノートを燃やしていく様を見つめていると、
スカーレットが部屋に入ってきました。


「破棄よ、破棄!
 あの馬鹿有責で違約金とか精神的苦痛?
 それで取れるだけ取るのよ!」

婚約者のヒューバート様がお医者様の家門なので最近の彼女は医学用語らしき単語を好んで使う
ようになってきていました。


「なんだったら公爵家にも請求して」

「婚約解消をお父様にお願いするつもりよ」

私の言葉にスカーレットは納得出来ないようでしたが、それだけはお父様に強くお願いしようと
思っていました。

ノーマン様のことは許せそうにもありませんが、
ブライトン家に高額な違約金の支払いはさせたく
なかったのです。