ノーマン様はご機嫌なご様子でした。


「まさか、そうしたいのは山々だけど
 騎士団を丸々3か月、休む訳にはいかないからね」

「お仕事の時は王都に戻っていらっしゃるのですね?」

所謂、血が上ると言う事はこれなのだと、初めて知りました。
頭がズキズキと痛んで来ました。


「そうだなぁ……
 だけど、君には会いには来れないかな
 仕事があるから、帰ってくるんだよ
 あちらとの移動にも、時間かかるしね」

(私の事なんて、二の次どころじゃない……
全く考えてもいないじゃない……)

あまりにも酷い彼の言い草に、悔しくて涙が出てきました。


「ねぇ、泣いたらダメだよ
 たったひと夏のことじゃない?
 来年からは、僕の一生はずっと君のもの
 じゃないか」

「クリスティン様はこの夏だけでいいと、仰っているんだ
 君はとても優しい人なのに、今日はどうして
わかろうと、してくれないの?」

彼は私が何も言えず、黙っている内に丸め込もうとするように、矢継ぎ早に話を続けました。


そんなお願いを聞けるはずがない。
認めない。
許さない。
言葉にしたいのに、言いたいことが言えない自分が。
婚約者に蔑ろにされている自分が。
情けなくて。
涙が止まりません。

(悲しくて涙が出てる訳じゃないわ)