その後、この事をノーマン様が持ち出して私を
責めることはありませんでした。


私達は以前と変わらず、定期的にお茶をして
一緒にお出かけしました。
ノーマン様は以前に増して、私に優しく丁寧に
接してくださいました。

けれど…彼の心はここに有らずという印象は
拭えなくて。


私は気づいてしまいました。 
『ノーマン様にとってクリスティン様は特別なのだ』と。

お父様にも、
毎週勉強を教える為に邸を訪れてくださる
ディランお兄様にも、
相談することは出来ませんでした。

ノーマン様がいくらクリスティン様のことを特別に想っていても、どうこう出来ないお相手です。
気にしなくていいと、言われるだけでしょう。


◇◇◇


王太子殿下が起こされた、婚約破棄の顛末が
人々の口に上らなくなるのには、時間がかかり
ました。


その顛末は呆気なくも、苦いものでした。

クリスティン・マクロス・ランカスター公爵令嬢は本当に帝国に行かれてしまいました。

それは追放ではなくて遊学、なのだそうです。