レオパード帝国とは、いささか納得しかねる追放先でした。

カステード王国にとって、帝国は一番近しい隣国です。
距離的にも近いので、官民共に両国の交流は盛んでした。
歴史的にもお互いに領土を侵犯することなく、
統治する王家と皇家の縁組は何度も繰り返されていました。

気候は我が国と同じく温暖ですし、話す言語も同じなのです。
つまり帝国に追放といっても、この国にいるのも変わりがないのです。


「レオパードにはランカスター公爵の知り合いも多くいて、過ごしやすいだろう
 ただし二度とカステードに戻れると思うなと、仰せでしたわ
 優しいんだか酷いんだか、よくわからない追放ね?」

「私もステーシー様の言われる通りだと思うわ
 普通なら追放って、もっと厳しい所へお命じになるものだと、思っていたわ」

『ここだけの話にしてね』と、ステーシー様は声を潜められました。


「横にいたアン・ペロー嬢も複雑な顔をしていたわ
 彼女はクリスティン様に、もっと厳しい御沙汰を希望していたんじゃないかしら」

「そう見えたのね?
 そういえば皆様はどちらに行かれたの?」



私が聞く皆様とは、
王太子殿下とペロー嬢、3名の側近の方達、それからクリスティン様のことです。
皆様のお姿は、この会場には見えません。