私は2学年上のクリスティン様のことをよく存じ上げてはおりませんが、同学年のスカーレットから
『王太子殿下とはお互いに政略と割りきったご関係だと思う』と、聞いておりました。


クリスティン様とのご成婚後に、おそらく王太子殿下は高位貴族のご養女になられたペロー嬢を、側妃としてお迎えになるだろう。
そしてそれはクリスティン様もご承知されているのだろう。
畏れながら、そう私達は予想していたのです。


もしクリスティン様が政略と割り切る事が出来ずに、王太子殿下の愛を乞われていたのなら。
愛されるペロー嬢に嫉妬して責めていたのなら。

愛されないお飾りの婚約者とクリスティン様を
侮った者もいたかもしれませんが、
クリスティン様はそうではありませんでした。


そのお姿はいつも凛とされていたのです。
その眼差しはまっすぐで。
王太子殿下のお隣で王太子妃として存在するのは、この御方以外にいらっしゃらない。
私達はそのようにお三方の関係を理解していました。

政略結婚という制度に、人生を振り回される可能性がある貴族の子息令嬢達には、クリスティン様の立ち居振舞いは尊敬に値していたのです。


「どちらに追放と、具体的にお命じになられましたの?」

「それがねレオパード帝国に行け、と」