初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました

「ノーマン様に夢中なのは結構だけど程々にね」

時折、従姉のスカーレットが私に注意をしてきました。


「貴女が何もかも、彼に合わせる必要なんかないのよ」

「でも、それが幸せなの
 ノーマン様がおいでって呼んでくれたら、私はいつでもどこでも会いに行くわ」

「貴女のような女性を、昨今の流行り言葉で
『脳内お花畑』というのよ」


自分というものを全く持たず、彼に合わせるのが幸せだと、能天気に笑う私を、スカーレットは
案じていたのです。

彼女もブライトン家の三兄弟とは幼馴染みでしたが、同い年のノーマン様に対しては少し厳しめに見ているようでした。


「ノーマン様って普通の人よ
 シャルには特別に見えてるのかも知れないけれど」


本当は……
口に出して言う程、私はノーマン様に盲目的だったわけではありませんでした。

この恋を続ける為に。
私は見ないように、考えないようにしている事が
ありました。


『脳内お花畑な女』

そう見られていてもいい。

(それでノーマン様と結婚出来るなら)