3年前、私は17歳でした。

カステード王国王立学園の高等部2学年目を
終えて、今から夏が始まろうとしていました。

当時の婚約者のノーマン様は前年に学園の騎士科を卒園して、王立騎士団のお仕事に就かれていました。


翌年に私が卒園したら、私達は結婚すると決まっていましたので、この年の夏が家族や友人と過ごす独身最後の夏のはずでした。
何事も無ければ、来年の今頃には私はノーマン様の花嫁になっています。


彼には我が伯爵家に婿入りをしていただくことになっていましたので、結婚しても住む邸は変わりません。

お父様からは新婚夫婦の寝室は好きに改装して
いいと、お許しをいただいていました。
色は彼の好きなブルーで統一したいと、私は考えていました。

特注の婚礼家具は今月末には注文しないと、間に合いません。


それらの結婚に向けて必要な事柄を忘れないように、私は覚書ノートを作っていました。
ノートのカバーを緑色にしたのはノーマン様の瞳の色だからです。

披露宴の招待客を一覧表にして、お父様と席を
決めては、やり直しを繰り返しました。
結婚にまつわる決まりごとや人から教えられた
情報なども記入して、確認しながら読み返し……

今や私の趣味は、覚書ノートの作成と見直しでした。
何かあればノートに書き込む私を、周囲の人達が
少し呆れたように見ているのも知っていました。