「夜会には連れていってあげるけれど、それだけよ
 礼服や帰りの馬車の用意は、自分でしてね
 会場に入れば、私は誰にも貴方を引き合わせたりしないから好きにしていいわ」


それはつまり自力でシャルを捕まえろと、いう
ことだ。

マダムは俺に甘い顔は見せない。
それは最初から徹底していた。


俺は以前短期間だけ関係を持っていた女性に、
マダムを紹介してもらった。

金と暇を持て余した彼女達にとって、俺のような見た目だけの力のない男は、人間ではなく物扱いだったので躊躇することなく、他に回せる。


初めて会った日に夜会のパートナーにしてもいいと、言ってくれたマダムに俺はサービスすることを申し出たが、彼女は静かに、
しかしきっぱりと拒んだ。

女性の友人内で、今回の夜会の招待状を手にしているのはマダムだけだった。
富裕平民が王国内で力をつけてきつつあったが、さすがにこの夜会は簡単には招待されないらしい。
マダムはグループの中で一目置かれていた。

何故王宮の夜会に出席したいのか、詳しく話す気のなかった俺だったが、
マダムは話さないなら協力はしないと、言った。

仕方なく、俺は3年前の婚約解消とシャルの話をした。


シャルの帰国は実家のメイド長から聞いた。