初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました

スカーレットの旦那様のヒューバート様の家門はお医者様の家系です。
お父様も了承されていると聞いて安心しました。


ギリアンが語る夢は、
彼だけの夢物語ではなくなる、と
この先もずっと、ガルテンが何代にも渡って
紡いでいく夢なのだ、と
私は確信しました。


「明日、エドガー様にこの話をしても、
 いいかしら?」

勿論、と義弟が頷いてくれました。



「私、蜂蜜入りの紅茶が大好きなのよ」

「子供の頃から知っています……」

そう言いながら、ギリアンは遊戯室の大きな窓を開きました。
少し肌寒い春の夜風が、庭から花の香りを運んできました。

星は見えませんでしたが、月が輝く夜でした。