初恋の沼に沈んだ元婚約者が私に会う為に浮上してきました

急に男が話す言葉に、違和感を覚えた。
語尾を伸ばすのは王国の人間じゃない。


3年前までは俺も騎士団に所属していた。
密入国者や逃亡犯を取り締まる為、王都警備の
第3は他国の訛りの研修を受ける。


この微かな訛りは何処の国だった?
西の方の国のような気がした。
ヴァーノン、マーヤ、フェルナ……何とか。
西方の国名を思い出そうとしたが。


……酔いが回ってきて、きちんと考えられなく
なってくる。 
目の前の男が何処の出身だろうが、どうでもよく思えてきた。


「それで? 続きを教えてくれよー」

「あ、あぁ……
 まあ、なんだかんだ色々あって婚約は解消に
なったけど 明日会ったらな」

「なんだかんだ色々あって復縁、ってやつー?」

「そうだな、そうなれば……
 いや、絶対復縁してやるよ」


俺は昨日夜会で会えたシャルの姿を、思い浮かべた。
3年ぶりのシャルは綺麗になってた。

あの頃は大したことないと思っていたが、
『領地経営科のマドンナ』と呼ばれていたのも
当然だった。


夜会のパートナーで横にいたのは従弟のギリアンだった。
ガルテンの血を色濃く受け継いだ2人は黒髪と
青い瞳がそっくりで、ショーウィンドウに飾られている揃いの人形みたいに見えた。
近寄りがたくて、皆が遠巻きに見とれていた。