貴女が望めば、何でも叶えられたのに。


別の女性をただひとりのひとと決めている、初恋のひとの心を、一瞬でも奪えた。

ノーマン様は貴女に焦がれて、私も家族も将来も捨てたのに、どうして貴女を抱かなかったの?

ランカスター公爵を恐れたと、殿下は仰られたけれど、貴女が望むならノーマン様との結婚を許したのでは?

貴女もそう思ったから、彼にその役割を求めたのではなかったの?


クリスティン様、貴女の魅了の力は何処かへ行ってしまったの?


そこから殿下が、引き受けられました。


「夏の半ばがあの女のぎりぎりのタイムリミットだった
 あいつ焦ったと思うよ、簡単に落とせるはずのノーマンが手強くて
 夏の頭にあいつから迫られると思ったのに、
そうはならない
 半ばまでに一度、もしくはそれ以上が必要なのに、時間はなくなる
 早くしないとお腹はどんどん膨らんでくる 
 貴方の子供よと、ノーマンを仮の父親にする
予定だったのに、ね
 シャーロット、あの女の魅了の力がなくなってしまったことだけど、妊娠と関係あると思わないか?」


妊娠したから魅了の力が失われた?
その力が子供が出来たので消えてしまった?


「こうは考えられないか?
 魅了の力は、お腹の中の胎児に移ったと」

殿下が仰っていた言葉を思い出そうとしました。
クリスティン様のことを、父親の公爵閣下は何と
言ってた?


「……選ばれし人間?」

「その通りだと思う
 魅了の力を持つ者が『選ばれし人間』なんだろう
 それは次の世代に引き継がれる力なんだ」