その光景が目に浮かびました。
皇妃陛下は怒り、皇帝陛下は頭を抱え、幼い頃の健気なクリスティン様の姿しか知らない皇弟殿下が皇帝陛下をお助けしようとして……


「母上は勿論反対した
 だがラーラ叔母上が母上を説得したんだ
 母上と叔母上は皇太子妃教育を一緒に受けて
いて、母上にとって叔母上は実の妹のような存在
だったから」


王国では幼い頃に婚約者を定め、そのおひとりに王太子妃教育を受けさせますが、
帝国は、幾人かの候補を帝都に集め、一定期間 合同で学ばせふるいにかけ、最も相応しい女性を皇太子妃とするのです。


「皇妃陛下はクリスティン様の事は警戒しておられましたが、企みには気付いていらっしゃらなかったんですね……」

「母上は妖しいとは感じられても、心中を読むことは出来ないからね
 事を起こすまで、あの女は大人しくしてた
 魔女に誘惑された馬鹿な王子に婚約破棄された『悲劇の悪役令嬢』の仮面を外さないよう気を
付けていた
 誰もがあの女の本性に気付いていなかったからこそ、叔母上は子供達を連れて、実家に遊びに行かれたんだ……」