「オーランド王太子殿下です……」


殿下はお皿にケーキを乗せ、私の前に置いてくださいました。


「確かに正義感からクリスティンを遠ざけようとした脳筋もいたが、側近の顔触れを思い出して
 実家が無事だったのは、誰の家だ?」

(顔触れを思い出して? ……思い出せ
………誰の実家?)


騎士団団長をされていた侯爵様は辞されてご領地へ。
大司教様もその地位から退かれ、教会内で家門は衰退するでしょう。
そして宰相様は引退されて、ご嫡男が後を継がれて……


「レイモンド様、……宰相様のご次男です」

「多分、オーランドというか側妃陣営と前宰相は
繋がっている
 息子が王太子に婚約破棄を焚き付けた
 側近に侮られたくないアーロンは、」

「婚約破棄をしなければいけなくなった……」

「周りが思う通りに、アーロンは動かせなかった
 だが、オーランドなら?
 ペローの魅了の話は計算外だったが、宰相は
引退しても後継ぎの長男を通じて現宰相を動かして、今も王家を操ってるんじゃないかな?」

オーランド王太子殿下は大人しいと評判の御方で、
廃嫡されたアーロン王子殿下は才気煥発だと、
言われていたのです。