自分からお声をかけてきたノーマン様でしたが、お話を続けることが出来ないようでした。

はっきりとした口調で言いたいことを遠慮なく
ハキハキと話されていたかつての彼の姿はどこにも見えませんでした。
 
周囲にいらした皆様が私達の様子を注視していらっしゃるように感じられて、このような茶番には付き合えないと、私は思いました。

  
仕方なく、私から話して差し上げることに致しました。


「3年ぶりですわね
 ご実家の伯爵家の皆様はお変わりございませんか?」

(社交界からはすっかり距離を取られたけれど、皆様お元気だと聞いたわ)


「変わりはないと、思うのだが……
 私は家を出て、騎士団の宿舎に居るので……」

(また、嘘を吐かれた……
解雇になったから、騎士団の宿舎には入れませんよね)

帝国に居る私が何も知らないと、思っておられるようでした。

私は何食わぬ顔で会話を続けました。


「左様でございますか
 ブライトンのおじ様おば様には、大層可愛がっていただきましたし、お兄様方にも大変お世話をおかけしてしまいました
 帝国へ戻る前に是非ご挨拶をと、思っているのですけれど」

「帝国に戻る?
 ……では、こちらに帰ってきたのではない?」

「帝国でお仕事させていただいております
 私、あちらに永住するつもりです」