ですが、確かに王家の名のもとに
『ペロー嬢がアーロン王子殿下を指輪の力で
魅了した』と、
『学園内で彼構わず指輪を見せていた』と、
公表されていましたのに。


「あの夜まで、アーロンがペローと知り合って
3年近く経っていた
 そんなに長い間魅了し続けられる力なんて、
小説や芝居にしかない
 ペローは魅了を持続させる為に、何度も何度も
指輪を見せないと、いけなくなる
 それもアーロンだけじゃなく、取り巻きの3人に対しても」


皇太子殿下に指摘されて、その通りだと私は納得しました。
公表されたように指輪を周りの方々にも見せていたとなると、ペロー嬢に魅了された方は他にも
多数おられたはずですが、そんな話はどなたからも聞いていません。


どちらかと云うと、沢山の信奉者をお持ちだったのは、クリスティン様。
 

「カステード王家も指輪の魅了なんて有り得ない事は、わかっていたと思う
 これは公式調書には載ってなくて、内通者からの報告だが、そもそもペローの指輪の話を持ち出したのはクリスティンなんだ」

「クリスティン様が、ですか?」

殿下が大きく頷かれました。


「調べろとか、怪しいとも、言ってない
 ただ指輪が気になると、聴取の際に言っただけだ
 それなのに、あの妖女に魅了された文官は上司に調査を進言し、学園で証言を集めた
 ペローが祖母の形見の指輪を周りに見せていた
という証言だ」

「見せていた、というだけの話を証言だと?
 私の所には誰も来られませんでしたわ」

「君は下の学年だからだろう
 云っても、同学年全員に話を聞いてはいない
 文官は恐らくクリスティンの言い分に沿った話だけを証言として取り上げた
 そして提出された調書に、王家は乗っかった
 王太子をたぶらかした罪人が必要だから」