「シャル、久しぶりですね……」

私の愛称を呼ぶ声に振り返りました。
私はシャーロット・バーミング・ガルテン。
お父様はカステード王国の伯爵位をいただいています。

私を『シャル』と呼ぶのは、家族や友人等親しくお付き合いをさせていただいている方々だけでした。

彼とは3年前に婚約を解消しています。 
今更、愛称で呼んでいただきたくはない御方です。

私は彼に向かって、丁寧にカーテシーをしました。


「御無沙汰致しております
 ノーマン・ダドリー・ブライトン伯爵令息様」


 ◇◇◇


私は3年前の破談後、17歳で隣国レオパード帝国へ留学しました。

『ここにはいたくない』と言い張る私にお父様が折れて送り出してくださって以来、初めての帰国になります。


帝国学院最終学年での留学当初は、なかなか周囲に馴染めず、自分から希望しておきながら祖国に帰りたいと、弱音を口にしてしまうこともありましたが……
やがて友人に恵まれ、充実した日々を過ごせるようになりました。

その留学時に帝国のダミアン皇太子殿下の知己を得て、現在私は皇妃陛下の侍女のお仕事をいただいています。