午後2時のカフェオレモーニング


🍃7月16日


 その電話は夕方に鳴った。

「はい。高瀬です。・・・お久しぶりです。・・・はい・・・えっ・・・そんな・・・・・・はい・・・わかりました。明日、伺います。」

電話を切った後、ユリは残った洗い物を続けた。

ガッシャーン・・・

凛空はその音を聞いてあわてて階段を降りた。

「ユリさん、どうしたの?大丈夫?」

「何でもない。手が滑っただけ・・・」

凛空はユリの動揺している顔を初めて見た。

「ユリさん・・・何でもなくないよね。」

ユリは割れたグラスを拾おうとしゃがみこんだ。

「大丈夫だって・・・イタッ・・・」

ユリはガラスの破片で指を切った。

凛空はその指を掴み、傷口を吸った。

「凛空・・・」

「黙って! ちゃんとしないと・・・」

凛空は目に付いた救急箱から消毒液とバンドエイドを出して手当てをした。

「ユリさん、片付けは俺がするから・・・居酒屋でやっていたから大丈夫。」

「ありがとう・・・」

「ユリさんは座っていて・・・、それでどうしたの? 話せる? 」

「・・・親友が・・・亡くなったの。」

「えっ?」

凛空はユリの顔を見た。涙が目にいっぱい溜まっていた。

凛空は抱きしめてあげたいと思った。でも・・・躊躇した。

「どこか悪かったの?」

「ずっと・・・最近は寝たり起きたりだった。急変して・・・亡くなったって。・・・親友の真理子は私とは全く違って体が小さくて、弱くて・・・心臓が少し悪かったから・・・結婚して子供作るつもりはなかったのだけど出来てしまって、産むのはやめたほうがいいって言われたけど、産みたいって言って頑張って産んだんだけど、その後彼女の体は元に戻らなかった。でも子供も大きくなって、今年大学生になって彼女も喜んでいたの。それなのに・・・なんで・・・急に・・・」

「それで・・・お葬式は?」

「明日。告別式は明後日。千葉だから・・・行ってくるね。」

「行ってきて。ちゃんとお別れしてきて。」

「明日と明後日お店休むから・・・ゴメンね。」

「何言ってるの。気を付けて行ってきて。・・・明後日の夜には戻る?」

「8時頃には戻ると思う。」

「あのさ・・・」

「何?」

「ううん。ところで大丈夫? 今晩側にいようか? 」

「・・・大丈夫よ。これから明日の用意するから・・・今日はもう帰ってもらってもいいかな・・・」

「・・・そうか・・・そうだね。」

凛空は書斎に戻りパソコンを持ってユリの家を出た。


― 俺はどうすればいいんだ・・・一緒にいて、抱きしめてあげたいけど・・・でも・・・


ユリは寂しかった。

― 凛空が抱きしめてくれると思った。期待してしまった・・・
  もうすぐ凛空も居なくなる・・・