「凛空、そこにワイングラスあるから出して。」
「どれ? いろいろあるけど・・・」
「赤の時は丸いの。」
「香りが逃げないから・・・」
「私も詳しくないけど、そうらしい。旦那が好きだったから・・・」
「ユリさんにとって旦那さんは今でも大切な人なんだね。」
「一生、忘れられないと思う。」
「・・・素敵だね。そういう人と出会えて・・・」
「凛空も出会えるわよ。必ず・・・」
「・・・」
二人はたわいのない話をしながら、チーズ、カナッペ、バーニャカウダ等を食べ、赤ワインをかたむけた。
凛空はユリのことをずっと見ていた。しぐさ、食べるときの口・・・笑った時の目・・・
― ああ、今晩これ以上ここにいてはいけない・・・
「ユリさん、俺そろそろ帰るね。」
「そう・・・今日はありがとう。楽しかった。」
「ユリさん、お礼言うのは俺の方だよ。」
「・・・まあ、お互い楽しかったってことでよかったね。明日からまた頑張ってね。」
ユリは凛空を送り出し玄関のドアを閉めた。そして閉めたドアに背中を付けもたれ掛かった。
― もう、これ以上凛空に近づきすぎてはいけない・・・あぶない・・・



