カーテンを開けると、眩しいほどの陽気がさし込んでくる。
 時計を見ると、もう九時半に差しかかるころだった。よく眠っていたからか、志弦も、里央を起こさずにいてくれたのだろう。

 体調はすこぶるよくて、体は軽い。
 昨日とは打って変わって頭もスッキリしていて、なんだかようやく考えがまとまった気がする。

(志弦さんに、いっぱい迷惑かけちゃった)

 呆れて嫌われてなければいいなって、胸の奥に痛みを覚えながら、里央はベッドから下りた。それから、自分の格好を確認する。

(志弦さんの服だ)

 さんざん迷惑をかけておいて申し訳ないけれど、少しだけ感動する。
 袖もだるだるだし、ズボンに至っては余りすぎだ。志弦は特別長身というわけではないけれど、やっぱり、大人の男の人だなあと強く感じた。

 そういえば、昨日かなり強引に志弦に着替えさせられた記憶がある。雨に濡れてびしゃびしゃだったところを、これだけは自分でやれと、叩き起こされて。
 ……あの大雨の中、下着を買いに、志弦はコンビニに走って行ってくれてたっけ。

 襟元を引っ張って、くんくんとか匂いを嗅いだりして。――でも、当然志弦の匂いは消えている。実に残念だ。

 ふと、テーブルの方を見ると、昨日里央が着ていた服が綺麗に畳んでおいてある。
 洗濯してくれていたらしくて、皺ひとつない仕上がりに彼の几帳面さを実感してしまう。

(お礼言わなきゃ。それから、ちゃんと、話も)

 きっと、里央の気持ちは届くはずだ。彼が線引きした向こうに、必ず。
 だからといって、応えてくれるとは、正直思えないけれど。
 でも、この恋を、ちゃんと伝えることはできる。
 里央は引かない。彼に線引きされても、絶対に。

 ――そして。

(私、もっとあなたのこと、知りたいです。志弦さん――)

 勝手に遠慮して、踏み込まずにいたのももう止める。
 里央は、本当の彼を見つけたい。