志弦はぎゅっと、眉根を寄せたままだ。
 でも、それ以上言葉はくれなかった。ぽんぽんと、まるで宥めるように肩を叩くだけ。


 ぐらりと視界が揺れた。
 もうやだ。考えすぎて、疲れちゃった。

 体がひどく冷えて、感覚もない。
 彼にこれ以上迷惑をかけたくない。子供扱いされたくもない。――そう思うのに。

「里央? ――おい、大丈夫か、里央!?」

 突き放すなら、いくらでも放っておけただろうに。根っからの世話焼きの彼に、甘えてばかり。

 わかっている。
 わかっていた。
 結局の所、志弦がどんなひとであろうと、里央は、彼のことが好きで。
 手を伸ばすのをやめたくなかった。