ぽつりと、大粒の雨が落ちてくる。
 ぽつり。ぽつりと頬を打ち。
 空を見上げる。

 雨が降りはじめた。

 傘も差さず、里央は三叉路の前で立ち尽くす。
 人通りも、車通りもない。誰もいない、孤独な街の中で、ただひとり呆然としている。


 それから、どれくらいの時間が経っただろう。
 真夏だというのに、体がひどく冷え切っている。
 わかっている。帰ったほうがいいのだと思う。引き返すなら、早い方がいい。

 全身ずぶ濡れ、風だってさらに強くなってきた。
 家に帰ったら、親には、危ないことをしてってきっと怒られる。
 二一歳。成人してるのに、まだまだ子供扱いされてばかり。
 いつまで経っても大人にはなれなくて、あのひとにもきっと、あとでため息をつかれるんだ。

 薄っぺらい。
 なんだよ、この意地。

 だからガキだって言われるんだ。


「ばかやろう!!」


 ――ほら。

 ほらね。怒られた。