夏色モノクローム

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 翌日、最後の試験を終えて、帰路につく。これで里央も晴れて夏休みだ。

 ちなみに、昨日の合コン仲間も今日も同じ試験を受けていた。
 彼女たちは皆、里央が葵の告白を断ったことを知っているようだった。どうも、二次会で葵本人から聞いていたらしい。
 冷やかし半分で「あんな素敵なひと、もったいない」って言われたけれど、里央の琴線には触れなかったのだからどうしようもない。

 さんざんからかわれてから、ひとり帰路につく。
 ――と、校門近くまできたところで、聞き覚えのある声に呼び止められた。

「里央ちゃん!」

 おかしい。もう二度と聞くことのない声のはずだ。
 校門の方へと目を向けると、見覚えのある姿があって、里央は困惑した。
 葵だ。
 少しはにかむような笑みを浮かべて、片手を上げて挨拶をしてくれている。

「葵くん、どうしてここに?」
「突然ごめんね」
「……まさか、ずっと待ってたりしました?」

 いや。さすがにそれはないかと思いたい。そうであったら、ストーカーじみていて少し怖い。

「君の友達に教えてもらったんだよ。この時間なら、正門前で待っていたら会えるからって」
「え」

 里央は硬直した。
 それからたっぷり十秒。
 今日さんざん冷やかしてくれた皆の顔を思い浮かべる。

(あの子たち……!)

 だからあんなに楽しそうだったのか!
 皆がなんでああも葵の話題で盛り上がってくれちゃったのか、理解ができた。昨日の二次会で、きっと、皆で葵と里央攻略方法でも練ったのだろう。
 頭を抱えたくなる気持ちになりながら、里央はしっかりと頭をさげた。